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好きなところで生きるように働く。木下朋子さん

錦江しごと図鑑5人目は、木下朋子ともこさんです。

錦江町の池田地区で、お花屋さん「TRee Life」と農業を旦那さんと共に営んでいらっしゃいます。

池田地区は、お店は小さな商店と温泉があるくらいの小さな地区ですが、伝統行事である神舞が昨年復活したりと、地元の人たちの愛着も強い地域。
そんな池田地区で暮らす木下さんに、花と農を営む暮らしについて伺いました。


「出身は都城みやこのじょう(宮崎県)なんです。旦那さんと同じ花屋の職場で知り合って、結婚してから高山の方に帰ってきました」

「第一子を産んだ時、旦那さんのお義父さんが、『もう誰も農業しないんだったらもう辞める』って言ったんです」

旦那さんは池田地区の出身で、ご実家は葉タバコと唐芋、干し大根の農家さん。

「農業もなんか魅力あるし、機械がこんなあるのにもったいないねって話していて。あと私がこの場所に来た時に、めっちゃいいところじゃんって気に入ったのもあって、農業しながら花をやってもいいんじゃないかなってなりました」

「でもどっちかっていうと、旦那さんは最初『なんもないよ』って言ってあんまり乗り気じゃなかったんですよね。多分、生まれ育った人はそう思うんでしょうね」

池田に住み始めてからはお義父さんのお手伝いをしつつ、「TRee Life」はオーダーとイベント出展のみという形で始まりました。
店舗が建てられた今でも常には開けておらず、イベントやワークショップの場所として使われています。

「現実的に考えた時に、お店を持っても常にはお客さんもこんなところには来ないだろうっていうのがあって。自分たちが目指してるのは装飾がメインなんです」

「お花のアレンジとか、小売ももちろん受けたらするんですけど、ここの自然のものを使ったりとか、ここにいる自分たちだからこそできる装飾をしたい。そういうお仕事を増やしていきたいっていう目標があるんです」

町のお花屋さんのような形ではなく、お客さんのメッセージをイベントなど規模の大きい空間で表現したいと語る木下さん。ちょっとずつ、そうしたお仕事の依頼も増えているそうです。

「この前は熊本の人吉ひとよしにあるお寺の装飾をしました。メインでつくるのは旦那さんなんですけどね。私は、完全裏方で細かいことをする係。ちっちゃい花のアレンジとか写真とかお客さんとの調整役をやっています」

「(依頼してくださった)そのお寺は市内から離れたところにあって、球磨川の豪雨災害の復興がまだ追いついていないらしいんです。行政に訴えても蔑ろにされているみたいで。その状況を伝えるためにも、頑張ってるんだよっていうのを、周りの人たちに私たちの花を通して伝えたいっていうオーダーでした。」

「球磨川まで行って流木を取りに行ったりとか、材料も現地調達したりして、それで表現してみました」

まだまだだけど、目標の方向に向かっているとおっしゃる木下さん。
畑の仕事と花の仕事は、それぞれが繋がる時があるとおっしゃいます。

「(旦那とも)お互いになんかやっぱ繋がるよねって話していて。無心で農業してるのがいいのかな。無意識に目に入ってくる自然の形とか、そういうのが花の仕事にいきているのかもしれません。だから花か農業かどちらかで生きていくっていうことは考えていなくて。結構今の暮らしに満足してるかな。休みはないし、収入もそう良くはないし。全然スローライフじゃないんですけどね」

農業の方も、今育てている干し大根と葉タバコは続けていきたいとおっしゃいます。

「葉タバコは害があるって言われてるものだけど、歴史とかは2人ともすごく興味を持っていて。古くから育てられてるものだし、植物としても面白いから、残してはいきたいですね」

「干し大根も、今は池田でやってるのはうちとあと1軒くらいなんじゃないかな。櫓を組むための竹の調達からだから、なかなか大変ですからね。しかも自分たちで加工、販売までしないとなかなか成り立たない」

「魅力を自分たちは感じてるけど、でもこの形じゃ絶対残っていかないよねって思っていて。したくなる農業ってなんだろうねって考えてますね。担い手が増えてほしいなと思います」

木下さんは昨年の秋、池田地区の閉園したひかり保育園で、「ひかり青空市」を池田地区の有志のメンバーと開催されました。当日は、地元のおじいちゃんおばあちゃんが野菜を売ったり、子どもたちが遊びにきたり、とっても大盛況でした。

地域を盛り上げたいという気持ちもありながら、やってみようと思ったきっかけは、地元の人たちに問いかけたいこともあったそうです。

「ひかり保育園を取り壊すって聞いていて。自分たちは加工とかで使いたいねって話していたんです。色々話し合いもあったけどいつの間にかその話がなくなってしまって。あそこの活用をここの人たちはどう思ってんのかなっていう、そういう意見も聞きたいなっていうのでやったんです」

「そしたら、想像以上の反響でした。結構地元の人たちが来てくれて、興味あるんだ!みたいな。じゃあ今までなんで黙ってたんだと思って」

子育て中だから勤めることは難しいけれど、そこを使ってチャレンジショップをしてみたいという人もいるそうです。

「ここら辺のおっちゃんたちが、なんか野菜を売ったりしたのがすごい楽しかったんでしょうね。みんなで使えたらいいなって思います」

木下さんの子どもたちも通う池田小学校も、再来年にはなくなることが決まりました。そんな中でも木下さんは子どもたちに、ここで育ったことに自信を持って欲しいとおっしゃいます。

「魅力的なところで育ったということを将来わかるといいなって思いますね。歴史もあるし、普通は経験できないこともある」

「旦那さんを見ていると、創作物とかすごいなって思う時があって。それは生まれ育った時の感覚が無意識に刻まれていたのかなと思うので、極力イベントの時とか子どもたちも出させていて、いろんな経験をしてもらっています」

「勤めて働かないと生きていけないとかじゃなくて、働くことはこんな田舎でも自分たちで作り出せるんだっていうことを伝えたいです」


編集後記
限られた環境の中で、子どもたちやこの土地に残したいと思うものを、今あるものやつながりをいかしあってなんとか形にしようと動かれている木下さん。この土地が好きなのだということが言葉の端々から感じられました。
朋子さんのように、錦江町に暮らすひとりひとりが、未来や子どもたちがこうあったらいいなと願って暮らしていることを感じていただけたら幸いです。



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