【錦江しごと図鑑】 田舎暮らしで第二の人生を満喫中。上田健児さん
今回の錦江しごと図鑑、17人目はセカンドキャリアとして錦江町への移住を決めた上田健児さんです。
これまで北九州市でパン屋さんを営んでいた上田さん。
ご家庭がひと段落し、お子さんの手が離れたことをきっかけに「何も縛られるものがなくなった」「人生一度きりだから」との想いを胸に、一念発起して錦江町への移住をしたのが2024年1月。
そこから半年以上が経過した現在の心境を忙しい合間を縫ってお休みの日にお伺いしました。
移住先を探すに辺り、特定地域づくり事業協同組合制度(以下特定地域づくり)を活用して地方への移住を考えられていたそうですが、最初はなかなか仕事が決まらずご苦労もあったそうです。
ただ、錦江町は他の町と一味違った印象だったとのこと。
「最初に錦江町に応募したのが2023年の9月頃でzoomでの面談でした。そこで話を伺って、後に初めて錦江町に来たのが同じ年の11月」
「面接に来たつもりだったので終われば帰るつもりだったのですが…夜には歓迎会を開いてもらって驚きました。えっ?まだ採用が決まってもいないのに歓迎会!?って(笑)」
「とにかく歓迎してもらった印象が強くて、人が温かい場所というのが第一印象でした。他の街でこんな出迎え方をされたことはないので…それで錦江町に来ることにしました」
そんな経緯があり、錦江町に来たのが2024年の1月初旬。
ここから全く新しい生活が幕を開けます。
「特定地域づくりではいくつもの仕事を2~3ヶ月のルーティンで経験して行くことになります。いくつかの事業者が登録してあって、繁忙期に入って人手が足りなくなった業態のお手伝いに行くイメージです」
「これまでは5~6の仕事を経験してきました。魚をさばく補助をしたり、キャベツやレタスの収穫をしたり、お茶の畑にシートを被せる仕事だったり。今は畜産農家さんで牛の世話をしています」
これまでの人生では長くパン屋さんを勤めて来られたため、ほとんどが室内作業。現在では野外での作業が増え、慣れない環境に四苦八苦されているそう。
「農作業や畜産の仕事は生き物だったり自然が相手。思いもよらない危険が多くて思ったより大変な日々でしたね。夏場になると、野外作業の暑さで意識が飛びそうになったり、足場の悪い場所で転びそうになったり、虫なんかのちょっとしたことでも気を付けないと本当に危ない」
「今は自然の厳しさを身体で学んでいます。汚れるし身体も痛いし、ずっとこの仕事をやられているみなさんはすごいです。私は錦江町にきてから10kgほど痩せましたが体重は戻ってきません(笑)」
「勉強になったことは、収穫した野菜がどうやって消費者に届くのかが分かってきたこと。実際にやってみて、流通の仕組みだったり知らなかったことを知れたのはよかったです」
「今は牛の世話、牛舎の掃除、牛の餌になる草の収穫などなど日々格闘ですね」
そんな慣れない日々ですが、休日の過ごし方はどうされているのでしょうか。
「休みの日には家事をこなしたり、買い物に出たりしてますね。余裕が出てくれば趣味にも手を出したいんですが…今はちょっと大変なのでもう少し先になりますかね。友人から魚釣りとか勧められてるから機会があれば色々やってみたいです」
「たまに飲み会にも誘われるのですが、みんな焼酎ばっかり飲んでいて驚きました(笑)スーパーの焼酎コーナーの大きさにもびっくりしましたし。元の町ではここまでの規模は見たことがないです。この地域特有ですね」
8月に行われた錦江町のイベント(レゲエ祭の前夜祭)では、ひょんなことから、とある企画に参加する流れになったそうです。
「イベントの前夜祭の1週間ほど前かな〜、パンを焼いて出してみない?っていうお話をいただいて。平日の仕事をしながらだし、準備する時間もほとんど取れないから最初は無理かな、と思っていたんです。ただ、その話が会社の人たちに伝わって、なぜかみんなでやることになって。これはもうやるしかないって」
イベントの前日は、仕事が終わってから仕込みでパンの生地作り。
当日は、朝7時から17時頃までかかってパンを焼く作業や出店ブースの準備に追われたそうです。
「これまでの仕事だと機械があったので作業も楽だったのですが、今回はすべて手作業だったので思ったより時間と手間がかかって大変でした。たった60個なのに…(苦笑)手動で作業をする大変さを改めて思い知りましたね」
そんな手作業でのパン作りでしたが、同僚のみんなのサポートもあり、なんとか時間に間に合ったそうです。
「間に合わないかな〜と思っていたんですが、みんなが手伝ってくれてなんとか形になりましたね。パンの販売でほんの少しですが売り上げにもなったので。大変でしたけど、やってよかった。少しは地域に貢献できたでしょうか。売り上げはみんなで相談して使いたいと思います(笑)」
そんな錦江町ですが、現在の住み心地はいかがでしょうか。
「海や山の自然がとても近くてそこはすごくいいですね。温泉も近場にあったりしますし。それほど多くはないですがスーパーなんかのお店もあるから、車と住む場所と仕事があれば生きていくのには困らないです」
「町を知ってもらえて若い人たちが来てくれたらもっといい町になりますよね。自然と触れ合う機会が減ってるから、子育てにもいいと思うんです。都会にはない環境ですよね」
「今は仕事に慣れるので精一杯で将来や未来のことを考える余裕はちょっとないかな…今の生活に馴染んで、楽しめるようになりたいですね」
◎編集後記◎
人生も中盤になって新しい世界に飛び込むのは結構勇気がいることだと思います。上田さんはそんな挑戦真っ最中なんだな〜と尊敬しました。
慣れない住環境や野外での作業など、大変なことも多いと思いますが、なぜか表情には充実している気配も漂っていたように感じました。
人生は一度きり。やりたいことがあったら飛び込んでみた方が、後悔せずに気持ちのいい人生を送れるのかもしれませんね。