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【錦江しごと図鑑】 繋がりが生きるちから。小西紀代子さん

錦江しごと図鑑16人目は、近所の方々の見守りや認知症カフェの活動に参加されている小西紀代子さんです。

「私はね、人のつながりはすごいよ。昔っからの友達がよーさんいるの」と笑顔で話す小西さん。

錦江町で生まれ育った小西さんですが、子供の頃はこの町を出たいという強い気持ちを抱いていたそうです。

「勉強が大嫌いで、早く学校卒業したら出ていきたいと思ってて。それで工場の仕事をしに、奈良県に友達と2人で行ったの。親の意見なんか全く聞かなくて、反対を押し切ってね。親が迎えに来たりもしたんだけど、逃げてましたね。そういう波乱万丈っていうかな、自分勝手な子供でした」

そんな小西さんは、家の近所にあった床屋の方と結婚。和歌山へ引っ越して3人のお子さんを育てられます。そして20年間の和歌山生活を経て、鹿児島へ帰ることになりました。

「私はね、人との縁はすごいあると思うの」と小西さんはおっしゃいます。奈良で知り合った同郷のご友人とは今でも頻繁に交流があり、ご飯に行ったり家に招待する仲なのだそう。

「その人の旦那さんも一緒に来てくれるんだけどね、『私が喋るからあんたはだまってて』って旦那さんに言うのよ。ご飯食べる時とかも、旦那さんが運転手でね」

最近では、関西に住む兄弟や孫たち、そして昔一緒に働いていたご友人たちに会いに行ったそうです。

「この間3週間くらいかな、関西に遊びに行ってきて。私が会いにくるって聞いたら、久しぶりの人達も集まってくれてね。もうずっとしゃべりまくってた」

「弟が日程や時間を全部調整してくれて、運転もしてくれたの。ゆっくり休める日が1日しかなかったから、帰ってきた時はぐったりだった」

3週間の旅のアルバムには、10組以上の親戚や友人たちと写る小西さんの姿が。お子さんやお孫さんたちも、小西さんがこられて嬉しい表情をしています。小西さんがたくさんの人々を引き寄せ、繋がりを大切にしていることが、写真からも伝わってきます。

「私もまた行けるかわからんけど、今度はあなたたちがこっちに来てねって約束してて。それまでは元気でいとかないとね」

小西さんが繋がりを大切にされていることは、ご近所付き合いでも感じられます。昔からの知り合いで、今は認知症のTさんや、親戚の方と散歩に行ったり、もう何年も一緒にいるのだそう。

特に、Tさんの家には毎日2回は様子を見に行き、一緒に散歩にも行ってるそうです。

「もう昔っから知ってるからね。今日はご飯食べた?とか、お風呂入った?とか。冷蔵庫もチェックしてるしね」

「私は言う時ははっきり言うのよ。ゴミ出さなきゃダメだよとか、お風呂入らなかったらTちゃん匂っちゃうよとかね。でも、あの人はなんでもできるからね。認知症でも買い物もできるし、料理もできる」

小西さんとTさん

「この間、Tちゃんのところに野菜を持って行って、『Tちゃん、これ天ぷらにしないと今日のおかずないから作ってくれない?』って言ったら作って家に持ってきてくれてね。私、認知症になったらTちゃんみたいになりたいって、本人にも言ったりしてるの」

小西さんは認知症カフェの運営にも携わっており、いつもTさんを連れて一緒に参加しています。

「毎回言い訳を色々して『今日はいかん』って言うけど、カフェが終わったら『今日も楽しかったねえ』っていつも言うからね。『行ったら楽しかったってTちゃん言ってるし、Tちゃんがいなかったら誰がお茶配ってあげるの?』って言って連れて行ってる」

「この間はTちゃんの誕生日だったから、一緒に祝おうって言って、カフェの運転手さんも一緒にジョイフルに行ってお祝いしたんよ。ひとりは寂しいからね」

認知症カフェの様子

小西さんの話からは、縁を大切にする気持ちが溢れているように感じます。

「お節介な性だからかな。私が世話してあげないととか、世話してあげているっていうよりは、気になるからなんかしちゃうのよね」

「友達とかと喋っていると、心がすっきりするし、得した気分になるのよ。バカみたいなしょうもない話でも、笑って過ごせる。人が頼ってくれると嬉しいし、こんな私でもいいのかなって思うの」

「父がちょうど77歳で亡くなってね。歳をとってから父の良さが分かるようになったのかな。私も今その年だけど、障害のある弟もいるしまだ逝かないよって思ってる」

家族や友人とのつながりを大切にするために、健康でい続けたいという意志が、小西さんの原動力なのかもしれません。

「欲を言うなら、もうちょっと元気でいたい。何がしたいってわけじゃないけど、健康でいられたらいいな。来年もまた会おうって言ってくれる人がいるから。行こうと思ったらいつでも行けるからね」




◎編集後記◎
インタビュー中、辛かったり嬉しかった思い出を、声を振るわせながらお話してくださいました。たくさんのご経験をされてきたからこそ、ご縁を大切に、みんなのために元気でいたいと言う気持ちが随所から感じられました。
またご自身の意思とは関係なく、Tさんが気になって見に行ってしまうとおっしゃるのが印象的でした。錦江町のような繋がりが強い地域だからこそ、この小西さんとTさんのような関係性が生まれるのかなと思います。
何もかもが多様化して、近くの人でさえ何に興味があるかなどわからない中で、このような繋がりが私たちをケアしてくれる一つになるのかなと思いました。