天日干しにこだわり続ける。鵜瀬水産
みなさんにとって、干物とはどのようなイメージでしょうか?豪勢な魚料理というよりは、日常になじんだ、ケの食事と思われる方が多いのではないかと思います。
そんな中、今回ご紹介するのは鵜瀬水産の代表、鵜瀬智昭さん。
鵜瀬水産は、智昭さんのおじいさんの代から始まり、現在三代目として魚の卸しや干物などの加工を行っています。
錦江湾が真正面に見える海沿いに加工場が位置しており、中では従業員の方々が朝から魚を仕分けたり、捌いたりしていらっしゃいます。
「これはね、ベテランの人しかできないよ。そうでないとおいしくなくなっちゃうから。」
と鵜瀬さんが言われたのは、卸した魚に塩を振る作業。
干物は塩加減が一番大切なのだそう。
鵜瀬水産で塩を振っていた方は、この道なんと50年のプロの方。塩をつまむ、魚に塩を振る、なじませる。この工程を、一秒ほどで仕上げます。一見簡単そうに見える作業ですが、塩をつまむ量、振るときの力加減、なじませ方。そのどれもが無駄な仕草も迷いもなく、まるですし職人のような手さばきです。
そして、塩振りと同じく干物づくりに大切な作業が、干して乾燥させる作業。
鵜瀬水産では、初代から伝わる天日干しにこだわっています。
干物をつくり始めた頃は、浜辺で魚を並べて干していたそうです。しかし、数年前から衛生的な理由で浜で干すことができなくなりました。
新しく乾燥させる方法を考える時、冷風乾燥機を導入する選択肢もあったそうですが、鵜瀬さんは事務所を改修し、屋上で干すことを選択されました。
「冷風乾燥機も簡単だし楽でいいんだけどね、魚の匂いが残るのよ。」とおっしゃり、「天日でちょっと干したらいやな臭みが消える。そこがやっぱり良くってね。だから天日にはね、敵わないよ。」と、天日干しの良さを語る鵜瀬さん。
魚を干す屋上は、錦江湾が見渡せる気持ちの良い場所。
干す行程では、仕入れる魚やその日の天気、気温、湿度によって干す時間が変わるため、常に状況を見ながら判断しないと干物は上手につくれません。
天候を常に心配しながらの作業のため、結構大変だとおっしゃる鵜瀬さん。それでも天日干しにこだわるのは、臭みが無くなるという理由以外に、海が見える屋上ということに関係があるような気がします。
鵜瀬さんの事務所の目の前には穏やかな錦江湾が広がっています。「ここは昔、砂浜がずーっと海の方まで広がっていてね、きれいだった。夏は砂が熱いから、途中で砂を掘って足を冷やしながら海まで走っていってたね。」と、子どもの頃の思い出を話してくださいました。
「砂浜で野球とかバレーも出来るくらい広くて、ボールを取りに海に飛び込んでいったりしてたね。店にいけすもいっぱい作って、活魚で売ってた頃は人がたくさん来てくれてね..。あの頃は楽しかったなあ。」と、当時を振り返る鵜瀬さん。
子どものころから鵜瀬さんにとって身近な存在だった海。そんな海の見える場所で干すということも、天日干しを続ける理由の一つになっているのではないでしょうか。
「魚を上げるエレベーターはいいんだけど、だんだんみんな年をとってきて、人のほうが屋上に上がるのがしんどくなってきた(笑)」とおっしゃる鵜瀬さんですが、その表情は天日干しを続けたことに後悔はない様子でした。
錦江湾が見える屋上で干されていたことを想像してみると、いつもの干物がちょっと奥深い味に感じるのではないでしょうか。鵜瀬水産の90年以上変わらない味、ぜひ味わってみてください。
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この記事は、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」にて掲載し、一部編集したものです。
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サムネイル写真提供
錦江町未来づくり専門員 友安麻里亜