【錦江しごと図鑑】やりたいことをやってきた人生、後悔はない。 原壽夫さん
今回の錦江しごと図鑑、19人目は7年前に東京から錦江町に移住してこられ、現在は錦江町総合交流センター内のトレーニングセンターの受付をされている、原壽夫さんです。
多様な職業や活動を通じて人生を謳歌されてきた原さん。
「元々生まれは和歌山でね、扇ヶ浜という海岸沿いに家があったこともあって、幼稚園の時分には、毎朝浜辺で体操をしてたよ。ハンコを集めて、たまったらお菓子をもらえたりしたね」
「その後は父の転勤の関係で長野に移ったんだけど、高校の時に和歌山に戻ってきて。でも床屋の修行にいくために高校は辞めてね。その当時は大阪の鶴橋にある理容の専門学校に通ってた」
専門学校卒業後は和歌山の白浜で理容師として就業する傍ら、一風変わった副業もされていたそう。
「当時、ギターをやっててバンドを組んでたのよ。地元のプロダクションに所属して、夜になるとダンスホールなんかに派遣されて生バンドで演奏するの。ダンスの先生に無料でダンスを習ったりして、楽しかったね」
「もうかれこれ50年以上前になるかなあ。当時の理容師の給料はとても安くてね。住み込みで働いて月給3000円。なんかやらかす(失敗する)と、また天引き。これじゃとても生活できなくて、バンドのお給金で生活してた。数万円もらえたからこっちの方が実入りがよかったよね。ある時、バンドで帰りが遅くなっちゃって、住み込みのお嬢さんに扉を開けてもらう、なんてこともあったかな(笑)」
程なくして、ご自身のお店を開業するために神奈川へ拠点を移します。商売は順調だったものの、40代の半ばで腰を痛めてしまい、廃業を決意。
心機一転して大手映画会社の警備会社へ就職します。
「東宝のスタジオや有楽町のセンタービルで警備を担当してたの。当時は有名人がよく来てたね。バカ殿様の収録で志村けんさんとか、菅原文太さんとか。明石家さんまさんなんかは焼き芋の差し入れを持って来てくれたり、気さくな優しい方が多かった。駐車場を担当していた時は女優の石田あゆみさんにお会いしたり、どれも楽しい思い出だよ」
60代になって退職後には、2度の癌の手術も経験。
義理のお母様の介護もあり、奥様のご実家がある錦江町へ7年前に移住されました。
「義理のお母さんは102歳まで生きて大往生だったの。総理大臣賞で金杯なんかいただいて表彰されて。警備会社時代に溜めた貯金をはたいて実家をリフォームしたんだけど、喜んでくれた。その代わり貯金はぜ〜んぶなくなっちゃった。ぜ〜んぶ(笑)。でも喜んでもらえたからよかったよね」
「警備会社の退職後はシルバー人材センターに登録していたから、その流れで錦江町でも同じように登録したよ。それでトレーニングセンターの受付をするようになったね」
「でも土日だけだから平日暇でしょ?それで南大隅町のネッピー館でふとした時に男の人に聞いてみたの。『バイト募集してる?』って。そしたら『してますよ』って言ってくれて。それからレストランで配膳のアルバイトをすることになったのよ。一時は夜もやってたんだけど、通勤の手段が電動自転車しかないから、さすがに危ないってかみさんが(言って)。それで昼だけになったの」
とてもフットワークの軽いお話で少々驚きましたが、原さんの多趣味な性格も関係しているのかもしれません。
「昔から身体を動かしたりするのは好きだったね。中学校の時に長嶋茂雄さんに憧れて野球をはじめて、社会人になってからも早朝野球のチームに所属したり、ずっと続けてた。定年後は東京の協会に加入して還暦野球とか。こっちに来てからはお義父さんに誘われてグランドゴルフ。南大隅で週末に楽しんでるよ」
「あとは若い時は麻雀してた。こっちに来てからはカラオケかパチンコかな(笑)」
原さんは今年77歳になるそうで、とても80歳を目前にしているようには見えません。血色がよく、笑顔を絶やさず、若々しさを保っておられます。その秘訣には前向きな性格が関係しているのではと、失礼かとも思いましたがお尋ねしました。
「こういう性格だからさ〜。やりだすとじっとしていられないのよね。かみさんからはとにかくじっとしてないよね、って言われる。人見知りする性格だったらインタビューなんて受けてないし(笑)。あとは、手術を機にタバコと酒をやめたのも大きいと思う。それをお菓子に変えたけどね」
「錦江町は楽しいですよ。都会にいた時は車なんて必要なかったから、免許も持ってないし。唯一原付自動車の免許は取ったけど、海岸沿いの家だから錆びちゃった(笑)。移動手段が電動自転車しかないから困っちゃうけど、それでも楽しいよ。暗く考えてもしゃーないし(笑)」
これからの人生の抱負を伺うと、原さんらしい率直で素直な返答がありました。
「特にない。長く生きすぎちゃった(笑)。子供もいないし、かみさんとのんびりこのままいけたらいいや。やりたいことやってきたし後悔はないよ」
◎編集後記◎
インタビューの間も終始笑顔が絶えず、これまで豊かな人生を歩んで来られたんだろうな〜と羨ましく感じました。
「お若いですね!」とお伝えすると「でしょ笑」と一言。
人生の後輩である私に対して、居丈高に接することなく、目線の高さを合わせて楽しくお話しいただきました。
原さんのように、後悔のないよう自分の心に素直に生きられれば素敵ですね。