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つながりが巡る幸せ。馬込由美子さん

錦江しごと図鑑、7人目は笹原地区に住む馬込由美子まごめゆみこさん。

「私はですね、人と人との繋がりが本当に幸せに繋がるって思いながら生きてきました」

開口一番そうおっしゃった馬込さんに、人と繋がる豊かさについてお話を伺いました。


錦江町大根占おおねしめの家で生まれ育ち、高校では家政科という料理や栄養、和裁などを学んでいたという馬込さん。
「大好きな女の先生がいらっしゃって、『私もいつか調理師の免許を取って、先生みたいになりたい』って言って。それで会社は滋賀の家政専門のところへ行ってました」

「調理師免許の試験日に、子供の頃に一緒に育った人がお産で入院して。その母親から家作りが始まって来れないからお前が行ってくれって言われたんですよね。『お前は希望を持って来たのに調理師の試験は受けんでいいのか』って会社の主任に言われたけど、こういう状況なのでって言って、結局その時免許は取りませんでした。それで2年間勤めたあとに錦江町に帰りました」

困っている人をみると、なんとかしてあげたくなる馬込さん。
保育園で働いていた時も、一回り若い職員さんの相談に乗っていたそうです。
「若い先生だから悩みがあるんですよね。私は20年くらい1人で厨房だったので、トラブルとかあれば泣いて来られるんですよ。我が子みたいな感じだなって思いながら、『大丈夫だよ、大丈夫だよ』って言って。そしたらスッキリしてまたクラスに帰っていってたりしてました」

「それで先生たちと仲良くなって、今でも4人ぐらいで食事に行くんです。おばあさんになったから大丈夫かなとか思うけど、誘ってくれるから楽しみで行ってます」

馬込さんの親しみやすさは、話を聞いてサポートしてくれるだけでなく、茶目っ気があるところも一緒にいたいと思える魅力なのかもしれません。

「草取りをしてもらうのに、手が空いた先生が2人ぐらいいたから、その人たちに、『草むしりをね、園長がしなさいって言ってて、 ごめんだけど私おやつを作らないといけなくて手を汚したらできないからさ、してもらえないかな?』って言って。その時に、 冷蔵庫にある飲み物とかお菓子とかあげるわけですよ」

「そしたら、辞めてからその人たちに会うと、『先生はさ、私たちをおだてて、何かくれて使ってたよね』って言われてね」

「いろんな出会いがあれば、私もありがとうって思う。全然喋ったこともない人たちと一緒になったら近寄ってくれることもあって。お菓子作ったよとか、味噌を持ってきたよとかね。また仲間が1人増えたとか、お友達が増えたとか思って」

「この間も誕生会をするから鹿屋に食べに行こうって急に言われて。7、8人で旦那も一緒に食べに行ったりしました」

「そういう関係が本当に自分の幸せに繋がっています。だから自分は、明るく生きられるんだなって」

現在は、シルバー人材センターで運動教室や認知症カフェの送迎のお仕事をされている馬込さん。
「なんか、もう抱きしめたいぐらい大好きなんですよ。年上の人たちだから可愛くてって言うと失礼なんですけどね。この人は真面目に生きてこられたのに、今足腰とか弱った状態で、自分も近づいてるなと思っています」

「送迎の時、『今日もありがとうな』って言えば、『あ、どうもな。気をつけて戻りや』って。もうその言葉が嬉しいわけですよ。その言葉をいただいたら、元気が出るなと思ってね」

「うつ状態のときもあったんです。仕事を辞めた時、社会から見放された感じになって。旦那が仕事に行ったら鍵を閉めて、家に閉じこもっていた時期がありました。でも『シルバーの仕事をお前もしてみないか』っていう旦那の言葉でシルバーの送迎を始めて。もう10年ぐらいなるんですよね」

馬込さんは1年くらい前から笹原自治会のサロンにも参加されており、今ではなくてはならない存在になっています。

「役職はしてないんですけど、その中では若手だから早く来てグランドゴルフの準備をしたりお芋さんを湯がいたり、お漬けものを持ってきたりしてます。お茶のみがあるからそういうのも楽しみで」

サロンが開催される公民館では、馬込さんの庭にあった桃の花が飾られていました。

「嫁いで来た時は50世帯くらいあったのが今は26になって、寂しいですよね。 子どもが2人いるくらいだから、どうなるんだろうって思うんだけど、サロンはいいなと思っています。1人暮らしの人たちが別の地区からも来てるから。どうなっていくかわからないけど、体が丈夫な間はこの地で寄り添っていきたいなって」

「足を引きずりながらでもグランドゴルフを楽しんだり、食事に行ける楽しみがあって。それで苦しかったり悩みがあったりするのをちょっと忘れたり、ギアチェンジができたりっていうのもあるんですよね。みんなに助けてもらって明るさと元気をもらってるっていうか」

「人と人の繋がりってこんなにあるんだって。それを大事にすれば、自分に幸せがくるんだっていうことを実感しています」


◎編集後記◎
人口の約半分が高齢者となる錦江町。地域での孤立や買い物難民など、高齢者に関わる課題は山積みです。そんな中、馬込さんのように人との繋がりが幸せで、ひとりひとりに愛をもって接することができる人の存在は、見えないところで沢山の人をケアして支えています。私たちも、「今日もありがとう」「あなたがいてくれてよかった」と伝えるところからが、誰も取り残さない町への一歩に繋がるのではないかと思います。

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