先々代から引き継いだお茶づくりの信念 ~城下製茶~
「お客さんに喜んでもらえるお茶をつくる。それがすべて」
そうおっしゃるのは、城下製茶の城下浩一さん。城下製茶は、浩一さんのおじいさんが昭和30年からお茶を作り始め、今では孫の4人を中心に、おじいさんから受け継いだ茶畑を大切に育てています。
製茶の工程はお茶の栽培、摘採、加工の3工程に大きく分けられますが、実際にはもっと細かい工程があり、加工だけでも6工程あるといいます。そして、そのひとつひとつの工程での判断がお茶の出来具合を左右するのです。
茶摘みの時には刈り取り数ミリ、加工の時には蒸し1秒の違いが、より良いお茶になるかどうかの分かれ目。さらにその日の気温や湿度、お茶の状態を見て判断するため、ひとつひとつの工程に神経を集中して作業されています。
その意識を当たり前のようにおっしゃり、「それくらいしないといいお茶は絶対につくれない」と言い切る浩一さん。普段から飲まれているお茶だからこそ、ひとつひとつ丁寧に手間暇をかけないとおいしいお茶が生まれないということが感じられます。
城下製茶代表の城下浩一さん
そんな城下製茶のお茶づくりが評価され、城下製茶のお茶は10年ほど前から銀座にあるお茶専門店で販売もされています。お店では、お茶は水出しで出されており、夏になる前には完売してしまうほど人気があるそうです。
「僕らも春から夏は作業で本当に忙しいので、お店に行っても自分たちのお茶は売り切れて飲めないかもね」と、嬉しそうに話してくださいました。
そのお店からは、お客さんの感想を送ってくださるそう。「今まで良い評価も悪い評価も送って下さっていたけれど、もう悪い評価だけ送ってくれって頼んでいて。なんか良い評価ばかり見ていると、下手なものつくれないなと思ってプレッシャーだから。でも毎年新茶の時期を楽しみに待っているという話を聞くと、その人たちのためにやっているんだなと思う」と浩一さんはおっしゃいます。
「お客さんに喜んでもらえるお茶をつくる。それがすべて。」
その意志は、先々代のおじいさんから引き継がれたものなのでしょうか。
浩一さんのおじいさんは、茶畑をずっと育て、守り続けていました。
「じいちゃんなんかは、もう趣味がないから。車を運転できなくなっても、家から電動カーに乗って山手にある茶畑を見に回って、事務所で電動カーを充電して、また下に降りて見に行って・・・ていうのを毎日してた(笑)。それくらいお茶のことが好きでしたね。僕ら孫も、じいちゃんには毎回お茶を飲んでもらって意見をもらっていたから」とおっしゃる浩一さん。
浩一さんたちのおじいさんがいつも通っていた茶畑の道
浩一さんを含めたお孫さんたちは、おじいさんがお茶畑を見て回っていた姿をずっと見ていました。それぞれいちどは別の道に進みましたが、今は4人が一緒になって、おじいさんのお茶畑を守り続けています。休みの日でも、気づいたら茶畑を一周回っていたり、茶葉の状態を確認しているという浩一さん。「手間をかけ、心をかけてこそ、うまいお茶ができる」というおじいさんの志。まさにそのまま、お孫さんたちが引き継いでいます。
茶畑からの景色。海と開聞岳がきれいに見えます。
錦江町は本土最南端にある大隅半島に位置しており、新茶の時期が最も早く訪れる地域。豊かな気候や土壌に恵まれた新茶は、お茶の有名どころよりも高い値段で取引されるそうです。
城下製茶の深蒸し茶は、鮮やかな緑色とまろやかな甘さが特徴的。代々大切に育てられたお茶は、豊かな香りと甘みが口の中に広がります。
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城下製茶ホームページ
http://www.jonoshitaseicha.co.jp/
取材・執筆 錦江町未来づくり専門員 馬場みなみ