見出し画像

【錦江しごと図鑑】ぶどう農園の未来を描く。 濵田高輝さん

錦江しごと図鑑、14人目は田代地区の奥深く花瀬川周辺でぶどうやマンゴーを栽培、販売するクラシックブドウ浜田農園の濵田高輝こうきさんです。

農業大学を卒業後、一般企業を経て、ご実家である浜田農園で働くことを選ばれた高輝さん。農園の作業で忙しい合間を縫ってインタビューに応えてくださいました。

子供の頃からご実家の手伝いをされていた高輝さん。

「小学校5~6年くらいから農園の手伝いをはじめたんですが、やっぱり子供だし、そんなに真剣じゃなかったですね。ぶどうばっかり食べたり、近所におばあちゃんの家があるから夏場はよく妹と一緒に遊びに行っていました。近くに小さい商店があって、お小遣いを握り締めてアイスを買いに行ったり、店の裏の花瀬川でニジマスを釣ったりして遊んでいました」

高く輝く、という意味合いのお名前だそうですが、他にも由来があるらしいです。

「僕が病院で生まる時、大雨だったらしくて。父も病院にいたのですが、農園の様子も心配だから見に行かないといけない。ただ僕が無事に生まれた後、父が病院を出ようとしたら晴れていたらしいです(笑)。それで高気圧から取って、こうき、と名付けてくれたみたいです」

夏の時期になると、農園は大忙しの毎日。

雑草を抜いたり、ぶどうの余分な粒を取り除いてきれいにする作業(摘粒てきりゅう)、一房ずつぶどうに袋をかける作業、種なしのぶどうを作るための作業(ジベレリン処理)、虫や動物対策など猫の手も借りたいくらい。

そんな中でも、手を抜かず品質を守る理由はどこにあるのでしょうか。

「お客さんに少しでもいいものを食べてほしい、提供したいというところはこだわっています。あとは、手伝いに来てくれているおばちゃんたちが作業しやすいように、ぶどう用の袋を事前に準備したり、働きやすい環境を作ることにも気を配っています」

「働きやすい、作業しやすい環境だなって思ってもらえたら、それが一番いいですね」

そんな日々ですが、その中でも大変なことは何でしょうか。

「台風や大雨が降ったりすると、お手伝いさんやバイトさんも総出で剥がれたビニールシートを戻すんです。大雨の中、紐を結び直す作業がなかなか大変で」

時には幅3~4mはある大きなハウスのビニールが突風で剥がれてしまうことも。高所作業で危険が伴いますが、美味しいぶどうのためには我慢のしどころです。

現在のオーナーである濵田隆介さんと作業中のみなさん

現在では約20棟のビニールハウスを運営されていますが、事前に台風が来るとわかれば、強風でハウスが倒れないように、ビニールをおろす作業も必要になってきます。

「ゆくゆくは後継ぎになるからそのプレッシャーもあって、なかなか大変ですね。台風は一年で一番忙しい8月にやってくるので、本当に厄介で」

山の上に位置するビニールハウス

時には汗だくになりながら、時には雨でびしょびしょになりながらの大変なお仕事ですが、どんなところに喜びを感じるのでしょうか。

「やっぱりウチのぶどうやマンゴーは美味しいから、みんなに食べてほしいですね。お客さんに食べてもらうのも嬉しいけど、手伝いに来てくれてるおばちゃんたちや友達だったり、身近な人たちが美味しそうに食べてくれて喜んでもらうと僕も本当に嬉しい」

大きく実ったぶどうの房。これからきれいに色がついて甘くなってくるそう

たまの休日は趣味は友達とゲームをしたり、釣りに出かけること。お父さんと一緒に海釣りに出かけることもあるそうです。時には大きなブリやヒラメが釣れることも。

「こだわり出すとハマるタイプなので、今の仕事にも活かせたらいいな」

また、創業者であり、お父さんの濵田隆介さんの尊敬するところもお伺いしました。

「やっぱり何もないところから、農園をはじめたのはすごいです。ゼロからイチを立ち上げた人だし。僕はできていないことだから。クラシックぶどうっていうコンセプトを考えたのもお父さんだし、独自の販路を自力で拡大したり、ワインの醸造をはじめたり行動力がすごいですね。その行動力にたまに家族が振り回されることもありますが(笑)でもそのおかげで今の農園があるので」

そんな農園での毎日を過ごす錦江町のいいところもお伺いしました。

「自然がいいのはもちろんとして、他の地域より錦江町は外から来た人たちにウェルカムですね。人があたたかいと思います。最初に来た人に対しては少し、この人どういう人なんだろう?って様子を見ているけど、人となりが分かればあたたかく迎え入れてくれる」

「(錦江町は)人が減っていくのはある程度仕方ないのかな、と思うけど、ゆくゆくは、若い人たちが来てみたくなるような、この町ならではのコミュニティが作れたらいいな〜」

「錦江町体験ツアーとかで1日かけて回ってもらったりするのも楽しいかも。朝からニジマスを釣って、昼はうちでぶどう狩りやってもらって、夜は神川ビーチでキャンプファイヤーとか。最高じゃないですか(笑)」

そんな高輝さんですが、将来はどんなの夢を思い描いていらっしゃるのでしょうか。

2023年から着手しているワイナリー

「ワインの知見を増やすためにフランスとか海外にも行ってみたいですね。うちは鹿児島の個人農園で初めてワインの醸造をはじめたのでもっと色んな人たちに浜田農園を知ってほしい。国内に販路を拡げたあとで、できれば国外にも販売してみたいです」

「ワインやぶどうは生活必需品ではないので、嗜好品として楽しんでいただけるような試行錯誤が必要かな。錦江町が町として盛り上がっていけば連動してうちも盛り上がっていくと思います」

もう少し余裕ができたらやってみたいこともあるそうです。

「お店のすぐ横に町営の花瀬バンガローがあって、ここで泊まれるんですよね。今駐車場になってる場所をオープンスペースにして、イスとテーブルを並べて、ウチのワインを飲んでもらってすぐ寝てもらうとか(笑)」

「町民同士もそうだし、外から来た人たちとの交流の場になったりしたらいいな」

クラシックブドウ浜田農園ホームページ



◎編集後記◎
お話ぶりや雰囲気はおだやかでのんびりした、やさしい印象の高輝さん。
ただ、お仕事に対する想いや姿勢は真剣そのもので、熱い想いをお伺いすることができました。

普段、スーパーなどでぶどうを見かけますが、きれいに色付いたぶどうにするための生産者の方の並々ならぬご苦労が垣間見られたような気分になりました。

また、筆者もマンゴーを一口いただいたのですが、濃厚な甘さと柔らかさで本当に美味しい!

高輝さんの手塩にかけた美味しいぶどうやマンゴーがもっと世間に広まってほしいですね。